きてけろ山形 ~庄内編~
1.はじめに
山形県というと、どういうイメージを持たれるだろう。さくらんぼ、芋煮、米沢牛、銀山温泉…。
私が最初に感じた山形の魅力は自然であった。観光名所である山寺から望む風景、蔵王の強酸性の温泉、湖畔に群生する水芭蕉など、どこへ行っても豊かな自然に囲まれていた。次に感じたのは、山形の多様で奥深い文化であった。山形県は江戸末期には8つもの藩に分かれており、各地域は現在でもそれぞれが独特の文化を有している。
今回は、山形県を庄内地方(旧酒田県)、最上&村上地方(旧山形県)、置賜地方(旧置賜県)の3つに分けて、各地域のおすすめ観光地をご紹介する。今回は第一回として、庄内地方を取り上げる。
江戸初期 | 山形藩 | 米沢藩 | ||||||
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江戸末期 | 山形藩 | 長瀞藩 | 上山藩 | 天童藩 | 新庄藩 | 庄内藩 | 松山藩 | 米沢藩 |
廃藩置県 | 山形県 | 上山県 | 天童県 | 新庄県 | 大泉県(旧庄内藩) | 松嶺県(旧松山藩) | 米沢県 | |
第一次府県統合 | 山形県 | 酒田県 | 置賜県 | |||||
第二次府県統合 | 山形県 |
参照URL: 日本全国の大名配置図 1630年 - 江戸時代の大名領地Map
参照URL:山形県について — 山形県ホームページ
2.庄内地方
https://www.openstreetmap.org/copyright
2-1. 地域の特徴
庄内地方(地図の紫部分)は山形県の海沿いに位置する。東端に出羽三山(湯殿山・羽黒山・月山)が自然障壁として存在する影響で、山形県の内陸部とは異なる文化を形成してきた。また、域内に存在する出羽三山は山岳信仰の聖地であり、古くから多くの参拝者や修行者を集めてきた。
経済の観点からは、その地理的特徴ゆえに舟運が盛んであり、主要な都市は河川の周辺に発展してきた。実際、地域を代表する都市として挙げられる鶴岡市と酒田市は、それぞれ赤川と最上川のすぐそばに位置している。
2-2. 観光地
A. 湯殿山総本山清水寺大日坊 (鶴岡市)
807年創建の弘法大師(空海)を開祖とするお寺。かつては42もの伽藍を有する日本最大級のお寺であったが、明治政府の廃仏毀釈の流れに反対したところ原因不明の火災により伽藍が消失し、現在の場所に規模を縮小し再建されたという歴史がある。
また、真如海上人の即身仏が安置されていることでも有名だ。真如海上人は飢饉や疫病で苦しむ民衆を救うために、自ら地下の石室に約3年間籠り即身仏となった。この即身仏を見るために海外からも参拝客が訪れる。
なお、参拝の流れとしては、住職の方から直接お寺と即身仏にまつわる歴史を詳しく説明いただき、御祓いを受けた後、即身仏とご対面となる。
参照URL:徳川将軍家祈祷寺 湯殿山総本寺瀧水寺大日坊
B. 羽黒山五重塔 (鶴岡市)
先ほど紹介した湯殿山と同じく、山岳信仰の聖地として出羽三山に数えられる羽黒山。その象徴的な存在である五重塔は、平安時代に平将門によって創建されたと伝えられている。入り口から五重塔までは10分ほどの道のりであるが、実はこれは序の口。山頂にある出羽三山神社までは、なんと2446段もの石段が続く。これは長い階段で有名な香川の金刀比羅神宮の階段数(1368段)の倍近くにもなる。
毎年夏には五重塔がライトアップ(日没~21時30分)が実施される。
C. 白山島 (鶴岡市)
「東北の江ノ島」という愛らしい別称をもつ風光明媚な島。海水浴場や釣り堀があり、夏場は特に多くの家族連れで賑わう。島内には一周できる遊歩道が整備されているほか、島の頂上には白山神社という神社がある。
この神社、超急勾配&263段の踊り場のない石段の先にあり、地上からの高さは約70m(1階を3mとすると、23階建てのビルに相当)である。高所恐怖症の人にとっては非常にスリリングな体験をすることができる。
D. 山居倉庫 (酒田市)
最上川の河口に位置する酒田は、古くから最上川流域の年貢米や工芸品の集積地として働きを果たしてきた。1672年に江戸までの海上航路(西廻り航路)が確立されると、酒田は航路の起点として江戸や大阪などの消費地と結ばれ、「西の堺、東の酒田」呼ばれるまでに繁栄した。結果として、全国長者番付で大関(現在の横綱)に選ばれるほどの豪商、本間家を生み出した。
山居倉庫は、明治期に入った1893年に建設された米蔵である。陸運が主流となった結果大部分は倉庫としての役割を終えているが、酒田の繁栄を物語る貴重な建造物として保存されている。また、酒田観光の拠点として、観光物産館「酒田夢の倶楽」や庄内米歴史資料館が併設されている。NHKの連続テレビ小説「おしん」の舞台としても有名。
参照URL: 山居倉庫|観光スポット|酒田さんぽ - 山形県酒田市の観光・旅行情報
E. 丸池様 (飽海郡遊佐町)
古くから地域住民の信仰の対象として「丸池様」と呼ばれている池。湧水のみを水源としており透明度が非常に高く、日光の当たり方によってはエメラルドグリーンに輝く。池の中には倒木が幾重にも重なって沈んでおり、まるでこの世とは思えない神秘的な雰囲気が漂っている。shounai.hateblo.jp
F. 玉簾の滝 (酒田市)
山形県随一の高さ63メートルをほこる、旅のクライマックスにふさわしい名瀑。滝壺の近くまで行くことができ、真下から見上げるその姿は圧巻の一言。駐車場から10分ほど歩く。GWとお盆の期間には例年ライトアップ(日没~21時)が実施される。
3. おすすめ観光ルート
今回ご紹介した観光地を回るモデルルートは以下のとおりである。レンタカーを乗り捨てできる場合は、山形駅で借りて新庄駅で返却(もしくは、新庄駅で借りて山形駅で返却)とすることにより、車での移動時間を短縮することができる。
また、以下では新幹線で首都圏から山形駅に訪問することを想定しているが、飛行機で庄内空港を利用する場合は、より移動時間を短縮することができる。ただし、庄内エリアは南北に広く移動に時間を有するため、訪問箇所を少なくしても2泊以上は必要と思われる。
<行程>
↓🚗(1時間15分)
A. 湯殿山総本寺瀧水寺大日坊
↓🚗(40分)
↓🚗(50分)
C. 白山島
↓🚗(40分)
D. 山居倉庫
↓🚗(30分)
E. 丸池様
↓🚗(40分)
F. 玉簾の滝
↓🚗(2時間30分)
≪次回、置賜編につづく≫